12月14日(土)コープふれあいセンター六条で、あすなら塾公開講座「フードバンクって何?」を開催し、38人が参加しました。基調講演として、認定特定非営利活動法人 フードバンク関西理事長の浅葉めぐみ氏を講師にお話しいただきました。2003年4月から活動を開始した「フードバンク関西」は、2007年に認定NPO法人に取得。「食べ物は命の糧、命そのもの、大切にしたい」という思いで、余った食べ物を預かり、必要なところに届ける活動をされています。浅葉氏は、日本の食料事情、フードバンクについてなどをわかりやすく説明されました。
 日本の食料事情は自給率37%となっており、世界で2番目に輸入に頼っていることで、とても土台がもろいことに私たちは危機感をもたなければならないと述べ、食品ロスは世界の大きな問題にもつながっていることを指摘し、食品ロスの削減にフードバンクを活用することが必要不可欠であると述べられました。
 続いて、「フードバンク奈良」から活動報告がおこなわれました。参加者からは、「普段の生活から食品ロスについて意識することを心掛けようと思えた講座でとてもためになりました。具体的な数値で、食品ロスの現状を理解でき、実感がわきました」「一人ひとりの小さな一歩が大きく変わると感じました」などの感想がありました。会場ではフードバンクを実施し、閉会後はコープふれあいセンター六条内のフードバンク奈良の倉庫を見学しました(希望者のみ)。

 

あすなら塾:~福祉・子育て編~フードバンクって何?
あすなら塾:~福祉・子育て編~フードバンクって何?
あすなら塾:~福祉・子育て編~フードバンクって何?
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●日本の食料事情
 日本の自給率は2018年度データで37%となっており、農産物の純輸入額は、主要国で中国についで2番目に多い。日本は輸入に頼っているにもかかわらず、約3000万tもの食品を廃棄し、そのうち約1/4はまだ食べられる食品、すなわち食品ロスであり、2018年度推計値で643万tにのぼります。国連機関が飢餓に苦しむ人たちを支援する穀物量は年間合計360万tで、日本はその約2倍の食品を廃棄しています。これをうけ、2019年5月に「食品ロス削減の推進に関する法律」が成立しました。食品ロスは食品製造業や流通関連企業から発生するほか、家庭で廃棄されるものが200~400万t、そのうち約1/4が手付かずの食品で、さらにその1/4が賞味期限以内。家庭からごみ袋に入れて出されたごみは、そのまま廃棄され、焼却・埋め立て処分されます。
 
●賞味期限と消費期限
 賞味期限は、美味しく食べることができる期限の目安。消費期限は、品質劣化が5日以内に顕著にあらわれるので、期限を過ぎたら食べないほうが良いという期限。期限は製造業者が決めます。
 1995年の法律改正から、賞味期限を表示することと引き換えに、製造年月日を表示しなくてもよくなったため、消費者には本当にいつまで安全に食べられるかがわからなくなり、特に若い人たちは賞味期限に頼って判断し、さっさと捨ててしまう傾向があります。
 食品流通業界には賞味期間を「納品・販売・賞味期限」の3分の1ずつ分けて流通の区切りとする慣習があります(1/3ルール)。食品流通関連企業から出る食品ロス100万tも、納品期限が切れると製造業・商社は小売業に販売できなくなることで、まったく問題がないのに大量に捨てられていることが日本の流通の大きな問題です。
 *例えば、賞味期間が90日の食品は「納品期限」30日間、「販売期限」30日間、「賞味期限」30日間となり、期限が切れた食品は、製造業者は卸さない、小売業は販売しないというルール。
 日本の家庭で出される食品ロスは200万~400万t。これは1年間で1人あたり15kg、1日お茶碗1杯分を捨てている計算になります。1世帯では年間で6万円分に相当し、全世帯で10兆円を超える額を廃棄していることになります。そのうち手つかずに廃棄された食品の24%が賞味期限以前のものがあることに驚かされます。ごみ袋の入れられたものを救い出す方法はないので、家庭の余剰食品の回収と再利用はフードドライブの実施しか方法はありません。
 
 食品ロスが日本で大量に発生する最大の原因は、日本人は「鮮度」にこだわること、食品の安全性に「超過敏」であることが挙げられます。また企業の問題として、食品業界は消費者の購買傾向を先取りし、賞味期限を短めに設定していること、コストパフォーマンスを重視し、値下げより廃棄、規格にはまらないもの(曲がったきゅうりなど)は取り扱わない、コスト優先・大量生産・大量廃棄のサイクルになっています。大量廃棄は世界の穀物の価格を上げ、貧しい国の国民の栄養不足状態などにつながるだけでなく、ごみの焼却によるCOの増加、農地乱開発のよる森林面性の減少などの環境破壊や、人口増加による食資源の枯渇などに影響します。食品ロスを減らすために、私たちにできることは、①食べ物を過剰に買わない・捨てない ②余剰食品の福祉的活用(フードバンクに寄付)③国内産の農産物を使う、環境保全に高い意識を持つ食品企業の製品を購入する ④環境に負荷を与えない暮らしかたを考える。便利すぎる暮らしの副作用は重大であると自覚をもつことです。

あすなら塾:~福祉・子育て編~フードバンクって何?

 「フードバンク奈良」は、2017年12月に成立。2015年12月に奈良県内ではじめてのこども食堂が誕生したことをきっかけに、県内でこども食堂が続々と立ち上がりました。2017年8月、なら小地域福祉活動サミットで、「奈良こども食堂ネットワーク」が設立され、会場で初めてのフードドライブを実施しました。活動内容は、「十分においしく食べられる食品を企業や個人から提供していただき、必要とする人に渡す」こと。現在、毎月第1・第3火曜日(午後)にコープふれあいセンター六条で活動し、ならコープをはじめとする提携団体はのべ368団体、2018年は4.7t、2019年は9月までで6.7tとなりました。集まった食品は、登録団体67団体のうち、子ども食堂が最も多く、障がい者事業所、生活困窮者支援、児童擁護施設などで、提供先の必要なものを聞き、仕分けをして提供しています。
 まだまだ活動の基盤が弱く、食品企業からの提供が少ない、人手の確保が難しいなどが課題(現在、正会員19人、賛助会員27人、団体会員5団体、ボランティア約30人で活動)。今後、配達の仕組み、ネットワークづくりや食品を必要としている団体の発掘とニーズの把握を目標に、さらに支援の輪を広げ、地域づくりのお手伝いをしていきたいと思っています。


フードドライブを開催します ご家庭で使わない食品はありませんか