~第5次エネルギー基本計画(案)に対して意見書を提出しました~

2014 年に現在のエネルギー基本計画が策定されて以降、2015年には国際的にも大きな変化がありました。国連において「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が全会一致で採択され、2030年に向けた目標(SDGs))が設定されたこと、また、 パリ協定において野心的水準で温室効果ガス削減目標が設定されたことなどです。これを契機として、各国政府のみならずビジネスの世界でも、長期的な視野から環境や社会に配慮した経営方針が次々と公表されてきており、再生可能エネルギーの利用はその柱となっています。こうした動きを後押しし、持続可能な社会への動きをより確かなものにしていくことが、政府の政策に求められていると考えます。このことから第5次エネルギー基本計画(案)に対して、ならコープの環境政策・エネルギー政策に基づき意見を提出することにいたしました。提出した意見の内容は以下です。
 
                     

 

                                                  2018 年 6月 12 日
経済産業大臣
世耕 弘成 様

市民生活協同組合ならコープ
                                                   理事長 中野 素子
 
 エネルギー基本計画の見直しに向けての要望
 
2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故は、日本国民に大きな価値観の転換をもたらしました。各種の世論調査で原発再稼動への反対が過半を占める状況が続いていることがそれを示しています。東京電力福島第一原子力発電所の事故から7年が経過した今も多くの人々のくらしに甚大な被害をもたらし続けており、避難を余儀なくされた方の中には今なお地元に帰還できず不自由な暮らしを続けている人々が存在するという実態があります。こうした国民の声や被災者の現実を真摯に受け止め、その願いを実現する計画を策定することが求められています。 2014年に現在のエネルギー基本計画が策定されて以降、2015年には国際的にも大きな変化がありました。国連において「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が全会一致で採択され、2030年に向けた目標(SDGs)が設定されたこと、また、パリ協定において野心的水準で温室効果ガス削減目標が設定されたことなどです。これらを契機として、各国政府のみならずビジネスの世界でも、長期的な視野から環境や社会に配慮した経営方針が次々と公表されてきており、再生可能エネルギーの利用はその柱となっています。こうした動きを後押しし、持続可能な社会への動きをより確かなものにしていくことが、政府の政策に求められていると考えます。市民生活協同組合ならコープは、気候変動問題や地域経済の発展、そして地球全体を持続可能なものにしていく立場から、今般のエネルギー基本計画の改定に向けて下記3点を要望します。
 
                         
  
1.再生可能エネルギーを推進する施策を具体化し、主力電源化に向けた意欲的な計画とすること
骨子案では「再生可能エネルギーの主力電源化」と明記され、温室効果ガスを排出しない国産のエネルギーである再生可能エネルギーの拡大が政府主導で展開されるとあり、気候変動問題や安心して暮らせる街づくりに積極的に取り組む生活協同組合にとって大変勇気付けられる内容です。各地域に点在し、山村地域が保有する再生可能エネルギーの利活用により、地域振興・地域経済発展につながると考えられます。当生協でも行政や各種団体と協力しながら再生可能エネルギーの利活用と地域振興に貢献できるよう取り組んでまいりますので、地域を元気にするためにも、国が再生可能エネルギーの電源比率を先進国水準である50%以上とすることを目標化し、主力電源化に向けて具体的に計画化することを要望します。
 
2.再生可能エネルギーを優先的に活用しきる考え方に転換し、導入の障壁となっている系統運用について見直すこと
日本各地が保有する再生可能エネルギーのポテンシャルを生かすためにも、欧州各国に学び、再生可能エネルギーを優先的に活用しきる考え方に転換されることを期待します。再生可能エネルギー拡大の障害となっている系統運用の問題を早急に解決することが、地域振興・地域経済への貢献につながると期待できます。現在、系統連携ができずに再生可能エネルギーの導入に制約がかかっている状況を改善することこそが再生可能エネルギーの主力電源化につながると考えられますので系統運用は再生可能エネルギーを最優先とすることを要望します。
 
3.原子力発電に依存しないエネルギー政策を明確にすること
骨子案には「原子力政策の再構築」「核燃料サイクル政策の推進」が項目として盛り込まれ、手厚く記述されています。しかし、半世紀にわたって1.1 兆円もの巨額の税金を使いながら成果なく廃炉となった高速増殖炉もんじゅや、23 回目の完成延期となった青森県六ケ所村の再処理工場に見られるように、核燃料サイクルは事実上破綻しています。さらに、使用済核燃料の処理、高レベル放射性廃棄物問題などの解決見通しも立っていません。そもそも原子力発電については、すべての判断の大前提として安全の確保と国民の理解が最優先されるべきで、現状はどの世論調査を見ても原発再稼働について反対が賛成を大きく上回っています。世界的な趨勢から見ても、もはや原子力発電はビジネスとしての経済合理性も見出せない状況であり、収束に向けた計画とすることを要望します。
                                                          以上