環境問題に取り組む基本的な考え方

ならコープの2030環境ビジョン 2020年9月策定

ならコープの2030 環境ビジョン

ならコープは、創立以来「よりよい生活は、平和とよりよい環境の中でこそ実現する」と考え、「安心・安全」を求めてさまざまな活動を展開してきました。1991年に、環境問題へのならコープの姿勢を「環境基本政策」にまとめ、事業高の千分の一を環境資金に充て、環境を守る取り組みを組合員とともに実践してきました。今回策定した「2030環境ビジョン」は、次の4つを大切にしたいことと位置付けてまとめました。


2030環境ビジョン策定にあたり大切にしたいこと

  1. (1) 地球温暖化に伴う気候危機への行動を「ひとづくり」「まちづくり」の視点を大切にし、ならコープ内外で協同の輪を広げ、誰も取り残さない安心してくらせる地域づくりの基盤である奈良の豊かな自然を守る取り組みを市民参加ですすめていきます。そのために行政や地域で活動する環境保全活動団体とこれまで築き上げてきた関係性を発展させ協働して取り組みます。
  2. (2) 1991年に策定した環境基本政策の考え方を踏襲し、環境保全活動を生協の理念に関わるものと位置づけ、すべての活動の基本として捉え活動していきます。奈良県の豊かな自然を次世代の子どもたちに残すためには私たちの暮らし方を見直す必要があります。大量生産・大量消費・大量廃棄の使い捨て文化から脱却するためにリデュースを中心に組合員とともに取り組みます。
  3. (3) わたしたち人類全体が、子どもの世代・孫の世代が安心して暮らすことができるように、この地球の持続可能性(サステナビリティ)を損なわない社会を実現するためには、地球温暖化に起因する気候変動の危機、エネルギー問題やごみ問題(食品ロスや海洋プラスチック)などの、自然生態系に与える影響の大きな問題と同時に、貧困・ジェンダー・健康・福祉などの未だに大きな格差が解消されず残っている社会的問題の解決が必要です。環境ビジョンでは国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の理念を具体化し行動していきます。
  4. (4) 特に「地球温暖化」「エネルギー」「食品ロス」「海洋プラスチック問題」は組合員のくらしや事業活動に密接に関わる問題です。ならコープの事業活動が地域や社会全体の環境負荷軽減に貢献し、また、環境対応そのものが事業効率の向上にもつながることが重要です。ならコープでは事業と活動を通じて、また地域や関係団体と協力してすすめることが社会から期待されています。これらの分野において環境経営のトップランナーとして取り組みます。事業で使用するエネルギー量を「減らし」、事業で使用したエネルギー量を再生可能エネルギーを「つくる」ことで、2050年にはゼロエミッション54を実現し、地域社会全体の温室効果ガス削減に貢献していきます。

ゼロエミッション54
環境を汚染したり、気候を混乱させる廃棄物を排出しないエンジン、モーター、仕組み、または、その他のエネルギー源をさす。

ならコープの2030環境ビジョン

(1) 「2030年に向けた温室効果ガス削減計画」を策定し、エネルギー政策にもとづき実践します。取引先や組合員と協力し奈良県全域での削減に貢献します。
  1. ① 化石燃料由来のエネルギーをCO2を排出しない再生可能エネルギー主体に転換します。
    1. 1)奈良県の豊かな資源である太陽・水・木質資源を有効に使い、再生可能エネルギー利用量を拡大します。
    2. 2)事業で使用する電気使用量を削減するとともに、ならコープでんきの電源の再生可能エネルギー比率を拡大し、ならコープでんきのCO2排出係数を大幅に低減します。ならコープでんき利用の輪を広げ、組合員宅ならびに奈良県全体のCO2排出量の削減を実現します。
    3. 3)事業所の設備更新時期には高効率の省エネ機器導入を検討し、エネルギー効率向上によりCO2削減に努めます。
  2. ② 燃料使用量を削減します。
  3. 1) 店舗事業や無店舗事業および宅配事業で使用する配送車両のEV 化をすすめます。
  4. 2) 奈良県内全域に地域拠点を作り、地域拠点から組合員宅への配達により配送距離の短縮を実現します。ならコープの宅配利用をすすめ、組合員が移動につかうエネルギーの削減に貢献します。
  5. 3) 地産地消、県内産業の発展に貢献する商品づくりと商品調達をすすめ、輸送にかかる燃料使用量の削減に努めます。
(2) 生協事業ならびに組合員家庭から生じる食品廃棄物・食品ロスの削減をすすめます。
  1. ① 店舗事業では、予測発注などを活用し、発注精度向上に取り組み食品廃棄量を削減します。
  2. ② やむを得ず生じる廃棄物についてはリサイクルなど有効活用に努めます。肥料化や飼料化に取り組むほか、バイオガス発電への燃料活用について研究します。
  3. ③ 事業活動のみならず社会における廃棄物・ロス削減を目指し、組合員家庭での食品ロス削減、フードドライブやフードバンク活動への協力を呼びかけます。
(3) プラスチック容器包装材と資材の削減に取り組みます。
  1. ① 事業で使用する容器包装プラスチックを削減します。無店舗事業では配達時に使用する内掛け袋の削減に取り組みます。店舗事業ではノントレー、小袋量り売りや店舗の店内加工で使用する発泡トレーの削減や自然界で分解するトレー(植物を主原料としたトレー)の取扱いを推進します。
  2. ② 循環型社会をめざして、商品の製造から廃棄の全過程で、容器包装の削減、再生原料や植物由来原料への切り替えを積極的に推進します。生活協同組合連合会コープきんき事業連合における商品の企画・開発に環境配慮の視点が強化されるよう事業連合の場で協議や働きかけをすすめます。
  3. ③ 循環型社会を構築するために、行政・他事業者・NPO など各種団体と共に、4R(リフューズ、リデュース、リユース、リサイクル) を推進します。
(4) 奈良の豊かな自然と文化を守り次世代の子どもたちに引き継ぐため、環境にやさしい地域づくりをすすめます。
  1. ① 奈良県の70%を占める山間部は、吉野の森と水を育み奈良県全体の豊かな自然と人口が集中している奈良盆地にその恩恵を与えています。環境保全のために産業、文化、人のつながりも豊かにする「吉野共生プロジェクト」を奈良県全体に広げる取り組みを継続します。
  2. ② 30年間続けてきた環境測定活動は、市民レベルの環境の取り組みとして継続し、よりよいまちづくりにつなげられるものとして、地域や行政と連携した取り組みを検討し推進します。
  3. ③ 次世代を担う子どもたちのために、自然環境に配慮したくらしの見直し活動に取り組みます。ならコープ環境基本政策に基づいた商品・サービスの利用をエシカル消費の視点で広げ、省エネルギー・省資源型ライフスタイルへの転換をすすめ、大量生産・大量消費・大量廃棄からの脱却に取り組みます。
  4. ④ 子どもや若い世代が楽しんで、地球温暖化問題・エネルギー問題、生物多様性などに関心を持って学べるよう、環境保全活動など体験を通じて学習できる取り組みを(一財)再エネ協同基金や環境活動に取り組む各種団体と協働して推進します。CO2を吸収する森林資源を増やす取り組みについては環境保全活動の中で具体化します。これらの取り組みを通じて、(一財)再エネ協同基金の賛同を広げます。

ならコープのエネルギー政策(要旨)

エネルギー問題に関する情勢と策定の経緯
  1. (1)2011年3月に発生した東日本大震災によって、電力をはじめとするライフラインは大きな被害を受け、東京電力福島第一原子力発電所では、放射性物質が外部へ放出されるという大事故に至りました。大規模集中型エネルギー供給システムの脆弱性が浮き彫りになるとともに、安全といわれていた原子力発電への国民の信頼が大きく損なわれました。
  2. (2)これまでの国のエネルギー政策は、国や電力会社などの供給者を中心にしてつくられ、国民は与えられたエネルギーを利用するだけの客体として捉えられ、その声が政策に反映させられることはほとんどありませんでした。しかし、これからのエネルギー政策の重要な柱となる省エネルギーや再生可能エネルギーの推進は、一般の国民がきわめて重要な役割を担います。エネルギー政策が供給者中心から需要者サイドを重視した国民参加の政策へと転換していくことが求められています。
  3. (3)日本生協連が2011 年7 月に実施した「節電とエネルギーに関するアンケート(全国の生協組合員2,351 名参加)では、今後の日本の原子力発電のあり方については、「廃止の方向」が全体の3 分の2 となりました。内閣府が2009 年に行った調査結果は「慎重に増設」が約5割で、福島原発の事故以降、国民の意識が大きく変化したことを示しています。
  4. (4)既存の原子力発電所の老朽化や地震の頻発等によるリスクの増大、新増設の困難、未解決な放射性廃棄物の処分問題、国民世論の動向や政府の方針等を踏まえるならば、原子力発電への依存を段階的に低減し、原子力発電に頼らないエネルギー政策への転換に踏み出すことが、今後の電力のあり方を考えるにあたっての現実的な選択であるといえます。
  5. (5)2012年7月に施行された「再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度(FIT)」は、再生可能エネルギー普及の取り組みを広げ、発電量を大きく高めていくことに繋がっており、奈良県においても豊かな森林資源に恵まれたよき自然環境を利用した地産地消のクリーン発電を通じた産業振興が実現する可能性を持っています。
  6. (6)クリーンなエネルギーとして、太陽光・風力・バイオマス・地熱・小水力発電などが注目を集める一方、これらの発電量は1%程度にとどまっており、今後の取り組みに大きな期待が寄せられています。省エネルギーに関する技術革新は日進月歩で進展しており、これらの技術の導入により、効率の良い事業活動を展開することが可能になります。
  7. (7)ならコープでは、「奈良の元気は、吉野から」という思いのもとに、積極的に再生可能エネルギーを活用することや再生可能エネルギーに関心を持つ各種団体と連携することをめざしたエネルギー政策を実行することで、奈良県の環境保全と地元産業の振興、地域のコミュニティ再生などにも寄与できると確信しており、こうした考え方を基本に再生可能エネルギー普及の取り組みを広げ、可能な限り発電量を高めていく決意であります。

 

ならコープのエネルギー政策における4つの基本課題
  1. (1)既存の原子力発電所の老朽化や地震の頻発などによるリスクの増大、未解決な放射性廃棄物の処分の問題などを踏まえ、組合員とともに原子力発電に頼らないエネルギー政策への転換に踏み出すことを国に求めていきます。
  2. (2)電力の大規模集中型から地域の自然環境を活用した自立分散型発電システムへの転換をめざします。また、地場産業の振興に貢献し、持続可能な地域社会創りと「再生可能エネルギーの開発・利用推進のための地域協議会」の設立を展望します。
  3. (3)事業活動において省エネルギーに関する設備投資を推進し、エネルギー使用量の削減とともに、電力のピークカットを重点に電力使用量の削減に取り組みます。
  4. (4)電力多消費型のくらし見直し活動を組合員に呼びかけ、省エネルギーに基づく新しいライフスタイルへの移行を通じて、家庭の温室効果ガス排出量の削減に取り組みます。

*本政策では、上記4つの基本課題に対して対応方針を持ちます。